100年先をみつめる保育園プロジェクト   仲間たち  

日本スローフード協会理事|一般社団法人そっか 共同代表 小野寺愛さん

2025.03.07

日本スローフード協会理事|一般社団法人そっか 共同代表 小野寺愛さん
https://slowfood-nippon.jp//

http://sokka.world/about/

 

農家さんとのつながりと、食のありがたさを知ること

小野寺: 今、日本の農家の平均年齢が68歳って聞いて、「10年後、食べ物はどうなるんだろう?」ってすごく思う。だからこそ、食べ物を作ってくれる人にもっと感謝したいし、その苦労があるなら、みんなで支え合えたらいいなと思ってる。

子どもたちの給食をオーガニックにするのはもちろんいいことだけど、それよりも「自分の食べてるものを誰が作ってくれたのか、どんなふうに作られたのか」を知ることのほうが大事だと思ってる。そこが伝わると、食べることがもっと楽しくなるし、それが自然と子どもや給食を作ってるスタッフにも広がっていく。

うちの幼稚園では、週に一回、年に5回、地元の農家さんのところに遠足に行ってる。そこでつながった農家さんから毎週野菜が届いて、お味噌汁の具材はほぼその農家さんのもの。でも、全部が全部つながりのある農家さんってわけにはいかなくて、足りないものはスーパーで買うこともある。ただ、なるべく「今、畑にあるものをどうやって給食に活かそう?」って考えながら献立を決めてる。だから、予定してたメニューも、届いた野菜次第で変わる。

つながりが増えることで、食の豊かさが生まれる

小野寺:  最初は、つながりのある農家さんからの食材は2割くらいしかなかった。でも、給食チームのみんなで何度も農家さんのところに行ったり、顔を合わせたりするうちに、「あるものはできるだけつながりの中で使おう」という気持ちが自然と広がっていった。

もちろん、給食費の予算が足りないこともある。でも、例えば「食育の日」に保護者にも給食を食べてもらって、食数を増やすことで資金を補ったり、みんなで工夫しながらやってきた。

「子どもの安心安全のためにオーガニックがいい」と言う人は多いけど、本当の安心って「農家さんとのつながり」があることだと思う。例えば、「採れすぎた野菜、よかったら使って」って農家さんが持ってきてくれることがどれだけ豊かか。それを感じると、今みたいに物価がどんどん上がる時代でも、つながりがあるからこその安心感がある。

子どもたちも、「この大根、スーパーで買ったやつより美味しいね」って言うことがある。きっと、それはただの味の違いじゃなくて、「どんな人が作ったのか」がわかるからこそ、美味しさにつながるんだと思う。自分で育てたものなら、残さず食べるしね。

「できるところから」でいいし、全部じゃなくてもいい

小野寺:  今日の給食は、卒園児のご家族が作った海苔を使った磯辺もち、そのお醤油は毎年子どもたちと手作りしてるもの。年長さんと一緒に育てた黒豆を石臼で挽いてきな粉にしたり、大豆から納豆を作ったり、みんなで手をかけたものが食卓に並ぶ。

でも、全部がつながりのある食材ってわけじゃない。例えば、ずんだを作ろうと思ったけど、枝豆がなかったからスーパーで買ってきた。でもそれでいい。大事なのは「できるところからやる」こと。無理に100%を目指すんじゃなくて、できる範囲でつながりを作っていけばいい。

最近、日本でも「オーガニック給食を目指そう」っていう流れがあるけど、「本当にそれだけでいいの?」って思うこともある。私が大事だと思うのは、「子どもの安心安全」だけじゃなくて、そのお皿の先にある世界。

オーガニックよりも、「つながり」のある食を

小野寺:  オーガニックがいいのは間違いないけど、それが「農家さんにとって無理のないものか」も大事。オーガニックを無理にやろうとして、農家さんが生活苦しくなったりするなら、それは違うと思う。食べる人にも、作る人にも優しくて、みんなが幸せで美味しいって思える形が一番いい。

だから、「オーガニックかどうか」よりも、「この野菜を作ってくれた農家さんのことを子どもたちが知ってるか」のほうが大事なんじゃないかな。大好きな農家さんが育てた野菜なら、「残したらもったいない」と思うし、最後まで食べようってなる。

食べ物を作る人がいるから、子どもも大人も生きていける。だから、「FARMERS FIRST(農家さんが一番)」の考え方を大事にしたい。予算がないからって「全部オーガニックにしなきゃ」って苦しむ必要はないし、それぞれの園に合った方法を見つければいい。

例えば、「まずは調味料からいいものを使おう」とか、「毎年この時期に特定の農家さんのサツマイモを食べる」とか、できることから始めるのが大事。無理して正しさを求めるんじゃなくて、「これやってみたい!あの農家さんとつながりたい!」っていうワクワク感のほうが、子どもたちにも伝わると思う。

「FARMERS FIRST」と「子どもたち FIRST」を軸に、楽しくつながりを作っていけたら、それが本当に安心で、豊かな食になるんじゃないかな。