農家|たいようまるかじり|渡邊幹さん
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オーガニック農業を始めたきっかけと味覚の変化
オーガニック農業に興味を持ったのは、東京農大で学んでた時に「体にいいことをしたい」って思ったのがきっかけ。でも、当時はまだ無農薬栽培の方法も確立されてなくて、それぞれの農家さんが手探りでやってる感じだったんだよね。
始めた頃は「体にいいし、やってみたいな」くらいの気持ちだったけど、実際に自分で無農薬の野菜を作って、3ヶ月くらいその野菜を食べ続けたら、味覚が変わっていくのを実感した。昔は普通に食べてたインスタントのスープとかが、急に美味しく感じなくなって、ああ、本当に体って食べるもので変わるんだなって思ったんだよね。
だからこそ、今、保育園の給食に自分の野菜を届けてるのも意味があるなって感じる。子どもたちの味覚が育つ大事な時期に、ちゃんとした美味しい野菜を食べてもらえたら、自然と「野菜って美味しいんだ」って思ってもらえるからね。
野菜が変える食の経験と農家との関わり
ピーマンが苦手だった子が、うちの野菜を使った給食で食べられるようになったとか、そういう話を聞くと本当に嬉しい。子どもたちって、野菜そのものの味がしっかりしてたら、意外とちゃんと食べるんだよね。
うちは年間で40種類くらいの野菜を育ててるけど、「これを作ってください」って指定されるんじゃなくて、「今ある旬の野菜を届けてください」っていう形で取引してもらえるのがありがたい。普通の取引先だと、特定の品目を決まった量作らなきゃいけないことが多いけど、保育園の給食では「今あるもので作る」っていうスタイルだから、農家としてはすごく助かる。
特に、給食を作ってるカフェ「ウィルド」は、まさに「その時にある食材を使って料理する」っていうスタイルだったから、カフェと給食が連携して、理想的な食の流れができてたなって思う。大磯町で小さな理想を実現してた感じだよね。
オーガニックと価値観のバランス
自分の作った野菜を食べた人の感想の中で、一番印象的だったのは、80歳のおばあさんが「80年間食べてきた大根の中で、あなたのが一番美味しい」って言ってくれたこと。すごくシンプルな白い大根なんだけど、その人の人生で一番になれたっていうのが、何より嬉しかった。こういう瞬間が、この仕事のやりがいなんだろうなって思う。
でも、オーガニックを推し進めることが全てじゃないとも思ってる。農薬や化学肥料を使ってる農家さんも、それぞれのやり方や信念を持ってやってるし、「オーガニックが絶対に正しい!」って押し付けるのは違うんじゃないかなって感じるんだよね。
実際、自分が農業を始めた頃、無農薬でやるつもりだったけど、雑草がすごくて苦労したし、隣の農家さんが農薬を使ってる中で「うちは無農薬です!」って言うと、ちょっとトゲがあるように聞こえてしまったこともあった。価値観の違いで対立が生まれることもあるから、そこはバランスが大事だと思う。
最終的には、「美味しいものを食べたい」っていう純粋な気持ちが、一番の答えなんじゃないかな。子どもたちが「この野菜、美味しい!」って感じるものを選んでいけば、自然とオーガニックや本当に良い野菜にたどり着くんじゃないかなって思うよ。